僕の名前はかたくちいわしです。
まだ子供です。
長崎の海で皆と泳いでいたら網にかかってしまいました。
漁港から工場に連れて行かれて、カリカリに乾かされて
ビニール袋に詰められて、東京の雑貨屋さんに並べられました。
そしてゴスさんに買われて、海のない埼玉県に来ました。
翌朝ゴスさんは、僕の身体を頭とはらわたと胴体に分けました。
胴体は二つに裂かれました。
胴体は、夕飯のお味噌汁になるためお水につけられました。
頭とはらわたは、お醤油とお砂糖で煮られました。
とっても熱かったのに、さらにご飯と一緒に炊かれました。
まったくひどい目に会いっぱなしです。
あの時網にかからなければ、今ごろ大海原で楽しく泳いでいたはず
なのにな、と思うと悲しくなりました。
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朝煮干しを裂いていたらかたくちいわし君と目が合って
しまいました。
かたくちいわし君のつぶやきが聞こえました。
命をいただくんだな、だからきちんといただく義務があるって
いつも忘れちゃう大事な事を思い出しました。